婚活を始めたとき、わたしもすごく真剣だったんです。
ノートを開いて、「理想のパートナー像」を書き出してみました。年収、学歴、職業、身長、容姿、家事への姿勢、休日の過ごし方、実家との距離、趣味の相性、将来の家族観……気づいたら、そのリストは10行を超えていたんですよね。
たぶん、あなたにも似たような経験があるのではないでしょうか。
婚活サービスに登録したとき。お見合いの前に条件を設定するとき。あるいは友人に「どんな人がいいの?」と聞かれたとき。気持ちを正直に書き出してみると、いつの間にかリストが長くなっている。それは、あなたがわがままだからじゃないんです。それだけ真剣に考えているからこそ、なんですよね。
ただ、今日お伝えしたいのは、そのリストが長ければ長いほど、出会いのドアは静かに、でも確実に、閉じていってしまっている、ということなんです。
「条件10個」が持つ、もうひとつの意味

婚活の場には、見えないルールがあるんです。
あなたが10個の条件を出すと、相手も10個の条件を持つ権利が生じる。これは婚活の世界では半ば当然のこととして受け止められているんですね。
婚活支援の現場で実際に起きた話をひとつ紹介しますね。
35歳、年収450万円の女性がいらっしゃいました。彼女が婚活を始めたとき、プロフィールに並べた希望条件は「年収1,000万円以上」「一流大学卒業」「上場企業勤務」「家事・育児に積極的」「身長175cm以上」──そのほかにも、いくつかの項目が続いていました。
決して非常識な願いとは思いません。安心できる生活を望むこと、家庭を一緒に作れるパートナーを求めること、どれも自然な気持ちですよね。
ところが現実として、お見合いがほとんど組めなかった。
なぜか。
婚活カウンセラーから告げられた「婚活市場の不都合な真実」は、こういう内容だったんです。男性側が実際にお見合いを希望していたのは「25歳・年収350万円の女性」であり「30歳・年収600万円の女性」だった、というお話でした。
これを聞いて、どう感じましたか?
理不尽だと思うかもしれません。わたし自身も、最初にこの話を知ったとき、複雑な気持ちになりました。でも、視点を変えてみると、これは「市場の冷たさ」ではなく、「ゲームのルールを知らずに参加していた」という話として読み取れるんじゃないかと思うんです。
婚活は、ただ理想を並べる場所ではないんですよね。自分がどんな存在として相手の目に映っているかも、同時に意識してみたい場所なんだと思います。
年収条件を100万円下げると、世界が変わる理由
ここで、「条件を下げなさい」という話をしたいわけではありません。
わたしがお伝えしたいのは、「視点を増やす」という提案です。
たとえば、年収条件を「600万円以上」から「500万円以上」に変えたとします。100万円の違い。そう聞くと、妥協したように感じるかもしれません。
でも、この変化で何が起きるかというと、「世帯収入」という考え方が生まれてきます。
あなた自身が年収400万円だとして、相手が500万円なら、二人合わせると900万円になりますよね。子どもが生まれても、どちらかが働き続ければ家計は十分に回る水準です。「相手に稼いでもらう」という一方向の設計から、「二人で作る家庭」という設計に切り替わる瞬間なんです。
婚活コンサルタントの植草美幸さんは著書『結婚の技術』の中で、「条件は”フィルター”ではなく”方向性”として持つべきだ」という趣旨のことを述べられています。条件を絞り込むことで相手を排除するのではなく、自分が大切にしたい方向性を見定めるために使う、という考え方なんですね。この視点は、婚活で迷子になりやすい方にとって、とても道しるべになるなと感じています。
条件を多く並べることは、慎重さの表れであり、自分を守ろうとする行為でもあります。ただ、その慎重さが、せっかく近くにいたかもしれない相手を、フィルタリングの段階で見えなくさせてしまっていることもあるのかなと思います。
「どうしても譲れないこと」は3つだけ書いてください

だから、わたしがクライアントさんにお伝えしていることがあります。
「どうしても譲れない条件を、3つだけ書いてください。」
3つ、というのは意外と難しいんですよね。最初は「絞れません」とおっしゃる方がほとんどです。でも、時間をかけて向き合うと、少しずつ輪郭が見えてくるんです。
「結局、わたしが一番大切にしたいのは、家族を大事にする人かどうかだ」 「価値観が合わなくて苦しかった経験があるから、そこだけは外せない」 「あとは、話していて楽しいと思える人なら、年収はある程度でいい」
そういう声が、じっくり対話を重ねると出てきます。
大切なのは、「リストを短くすること」ではないんです。「自分が本当に大切にしたいものが何か」を一度、真剣に問い直してみてほしいんですよね。それが3つを選ぶ作業の本質なのかなと思います。
この作業を、婚活の専門家は「条件の棚卸し」と呼んでいます。そして「条件の棚卸しは妥協ではない」という言葉を、わたしはとても大切にしています。
妥協とは、本当は欲しいのに諦めること。でも、棚卸しはちょっと違うんですよね。本当に自分にとって必要なものと、「なんとなく書いていたもの」を分けていく作業なんです。
3つに絞ると、何が変わるか
先ほどの35歳の女性の話の続きをします。
婚活カウンセラーとの対話を通じて、彼女は条件を見直しました。「絶対に外せないもの」を3つに絞り、他の項目は「あればうれしい」という位置づけに変えました。
すると、お見合いの数が変わったそうです。それまで月に1〜2件だったものが、数倍に増えたと聞きました。お見合いの数が増えると、単純に出会いの母数が変わってきますよね。母数が変われば、「この人いいな」と感じる確率も変わってくるんです。
婚活は確率の話でもあるのかなと思います。どれだけ真剣に向き合っていても、出会いの総数が少なければ、確率論的に厳しくなってしまう。条件を3つに絞ることは、出会える人の数を増やすことに直結していくんですよね。
そして、こんな変化も起きます。
条件のフィルターを少し広げると、「この人は条件に合っているかどうか」ではなく、「この人と話していて、どう感じるか」に意識が向くようになってきます。スペックではなく、一緒にいるときの空気感を感じる余裕が生まれてくる。これは、意外と大きな変化なんですよね。
条件の多い婚活は、チェックリストを持って相手を評価する作業に近くなってしまいます。でも、3つに絞ると、そこに少し「会話する余白」が生まれるんです。その余白が、本当の意味での出会いを引き寄せてくれることがあるのかなと思います。
最後に、あなたに伝えたいこと
婚活中の方に、ひとつだけお伝えしたいことがあります。
条件を10個並べてきたあなたは、間違っていたわけではないんです。それだけ真剣に、自分の幸せを考えていた証拠ですよね。その誠実さは、出会った相手にもきっと伝わっていきます。
ただ、婚活の場は「理想を語る場所」であると同時に、「出会いを実際に引き寄せる場所」でもあるんですよね。その二つのバランスを取るために、今一度、自分のリストを眺めてみてほしいなと思うんです。
どうしても外せないものは何でしょうか。それを3つだけ残して、他はいったん「あればうれしい」に移してみる。それだけで、見える景色が変わってくることがあるんです。
婚活は、自分を安売りすることでも、妥協の連続でもないんですよね。自分に合った人と出会うために、賢く動くこと。3つの軸を持ってゆったりと構えるあなたのほうが、出会いのドアは自然と開いていくんじゃないかなと思います。
焦らなくていいですよ。頑張らなくていいんです。ただ、一度だけ、そのリストを見直してみてくださいね。
佐々木志穂 婚活コーチ・コンサルタント 「出会いをデザインする」をテーマに、30代女性の婚活を伴走型でサポートしています。