婚活をしていると、こんな経験をされたことはないでしょうか。
お見合いやマッチングアプリで出会った相手と何度かデートをしてみた。話もできるし、きちんとした方だとわかる。一緒にいても不快じゃない。でも……なんか、ピンとこない。
「好きになれないな」
そう思った瞬間、お断りのメッセージを送ってしまった経験。わたしのところに相談に来てくださる女性の、じつにたくさんの方が、このパターンを繰り返されているんですよね。
「ピンとこない」の正体

ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのですが、その「ピンとこない」の感覚って、いったいどこから来ているのでしょうか。
胸がドキドキしない。会いたくて仕方がない、という気持ちが湧かない。彼のことを考えると頭から離れない、という状態にならない。
これって要するに、「恋愛映画やドラマで見てきたあの感覚」が来ていない、ということなんですよね。
わたしたちは子どもの頃からずっと、「恋愛とはこういうもの」という強烈なイメージを見続けてきているんです。胸が高鳴る出会い、嫉妬で揺れる感情、会えない夜の切なさ。それが「恋愛の正解」として刷り込まれているから、その感覚がないと「これは違う」と判断してしまう。
でも婚活コーチとして現場に立っていると、はっきり見えてくることがあるんです。
その「ピンとこない」の感覚こそが、じつは結婚への近道だったりすることがあるんですよね。
3年に1人という現実
三島光世さんの著書『婚活は「がんばらないほうが」うまくいく』の中に、こんなお話が出てきます。
「好きになれる人が3年に1人しか現れないとしたら」という仮定の話なんです。
婚活の場でドキドキする相手、一目惚れしてしまうような相手、そういう出会いは、確かに3年に1人くらいの頻度でしか起こらないことがあります。もしそういう人だけを待ち続けるとしたら、次の出会いは3年後。その次も3年後。
30代前半で婚活を始めた女性が、「好きになれない人は断る」を繰り返していると、気づいたころには40代になっている。そういう現実があるんですよね。
さらにもう一つ、考えてみてほしい数字があるんです。
一般的な恋愛では、結婚の意志を確認しないまま平均3年ほどお付き合いすることが多いと言われています。3年間ドキドキしながら交際して、いざ「結婚したい」と伝えたとき、相手の気持ちや人生設計が違って破談になる。このケース、婚活相談の現場では本当によく起こっているんですよね。
ドキドキして、3年過ごして、また振り出しに戻る。
恋愛脳で進んだ道の先には、こういう落とし穴が待っていることがあるんです。
カウンセラーが「このふたりなら」と確信した話

わたしが特に印象に残っているのは、三島さんが書かれていた婚活の現場エピソードなんです。
カウンセラーとして長年サポートを続けていると、「ああ、このふたりなら絶対うまくいく」と確信できる組み合わせがあるそうです。価値観が近い、生活リズムが合う、お互いへのリスペクトがある、将来の希望も似ている。一緒にいる姿が自然に描ける、そういうふたり。
でも、その女性は「彼のことを好きになれないから」という理由で、交際を終わらせてしまわれたそうなんです。
カウンセラーとして、どれだけ惜しいと思われたか。そのふたりが一緒になれたら、穏やかで温かい結婚生活が待っていたはずなのに、と。
このエピソードを読んだとき、わたしはすごく胸が痛くなってしまいました。
なぜなら、その女性がされたことは「間違い」でもなんでもないんですよね。彼女はただ、「恋愛とはこういうもの」という信念に従って、誠実に選ばれただけ。悪いのは彼女ではなく、わたしたちが長年信じてきた「恋愛の文法」のほうなのかなと思うんです。
恋愛は麻薬に似ている
三島さんはこんな言葉を使われています。「恋愛は麻薬のようなものです」って。
少し過激な表現に聞こえるかもしれませんが、脳科学的にはかなり的を射た表現なんですよね。恋愛初期のドキドキは、脳内でドーパミンという快楽物質が大量に放出されることで起きているんです。これは興奮状態であり、一種の「非日常」。
だからこそ、ドキドキしている状態のときは判断力が下がってしまうんですよね。相手の欠点が見えにくくなる。自分が何を求めているか、冷静に考えられなくなる。長所だけが輝いて見えて、生活の相性や価値観のすり合わせを後回しにしてしまう。
そして、ドーパミンの分泌は時間が経つと落ち着いていきます。最初のあの高揚感は、どんなに好きな相手でも、必ず薄れていってしまうもの。
つまり「ドキドキしているから好き」という状態は、関係の初期にしか続かないんですよね。その後に来る「一緒にいて落ち着く」「この人といると自分でいられる」という感覚のほうが、長い結婚生活を支えるエンジンになっていく。
婚活で求めるべきは、ドーパミンの刺激ではなく、「この人と暮らしたい」と思える安心感なのかなと思うんです。
「居心地の良さ」を侮らないでほしい
「好きになれないな」と感じた相手を思い出してみてくださいね。
一緒にいて、緊張しなかったでしょうか。話していて、沈黙が苦じゃなかったでしょうか。食事のテンポや、歩くペースが合っていたでしょうか。
ドキドキがないから気づきにくいけれど、じつはこの「居心地の良さ」こそが、結婚生活の基盤になるものなんじゃないかなと思います。
毎日一緒にいる人と、ずっとドキドキし続けることはできないんですよね。朝ごはんを食べて、洗い物をして、仕事の話をして、疲れて帰ってきて横になる。そういう日々の中で、一緒にいてラクだと感じられること、自分らしくいられること。それが「この人と結婚してよかった」につながっていくんです。
居心地の良さは、地味に見えますよね。ドラマチックじゃない。でも、その地味さの中にこそ、結婚の本質が宿っているのかなと感じています。
婚活で「ピンとこない」と感じていた相手が、実は居心地が良かっただけ、ということはよくあるんです。ドキドキがないから「好きじゃない」と思い込んでいたけれど、それはただ「安心できる人」だった、ということ。
三島さんが言われているように、「婚活で”好きになれない”は成功のもと」という言葉は、こういうことを指しているのかなと思います。
視点を変えると、世界が変わる
今まで「好きになれない」と思って断ってきた相手の顔が、いくつか浮かんでいたりしませんか。
その判断を責めてほしくないし、後悔してほしいわけでもないんです。わたしたちはみんな、信じてきたことに従って選んできただけ。今のあなたは、何も間違っていないんですよ。
ただ一つ、こんなふうに視点を変えてみてほしいなと思うんです。
「ドキドキするかどうか」ではなく、「この人と一緒にいて、自分らしくいられるかどうか」。
そこを基準に相手を見てみると、婚活の景色がまったく変わってきます。今まで「ピンとこない」とスルーしていた人の中に、実はとても素敵な相手がいらっしゃったことに気づくかもしれません。
恋愛脳から結婚脳へ。それは、今持っている「恋愛の文法」を手放して、もっと自分に優しい新しい視点を受け取ることなんです。修行でもなければ、我慢でもありません。ただ、判断の軸を一本変えるだけ。
婚活は、あなたが思っているよりずっとシンプルになれるんですよ。ドキドキを探すのをやめた瞬間から、本当の「結婚できる出会い」が見え始めてくるんじゃないかなと思います。
参考文献:三島光世『婚活は「がんばらないほうが」うまくいく』
佐々木志穂 婚活コーチ。30代女性を中心に、婚活の「思い込みのほぐし方」をテーマにしたセッションを提供。恋愛脳から結婚脳への切り替えをサポートし、「がんばらずに幸せになる婚活」を実践する女性を応援しています。