「いい人がいたら結婚したい」

そう思いながら、婚活アプリに登録して、プロフィールを書いて、いざ活動を始めてみた。でも何かがうまくいかない。マッチングはするのに、会うとなんとなくピンとこない。条件は悪くないはずなのに、自分が何を求めているのかよくわからなくなってきた。

そんな経験、ありませんか。

わたしが婚活のカウンセリングをしていてよく感じるのは、「相手探し」を始める前の準備が、実はいちばん大切だな、ということなんです。就活に自己分析があるように、婚活にも自己分析は欠かせないんですよね。相手のことを知りたいと思うなら、まず自分のことを知っていなければ、どんな出会いも「なんとなく」で終わってしまうことがあるんです。

28歳の彼女が教えてくれたこと

自分という地図を、ゆっくり広げてみる

以前、28歳の女性がカウンセリングにいらっしゃいました。フリルのついたブラウスに淡いカーディガン、首もとには小さな星のネックレス。とても可愛らしい雰囲気の方でした。

ひととおりお話を聞いたあと、わたしはこう聞いてみたんです。

「どんな方と結婚したいですか?」

少し考えてから、彼女はこう答えてくださいました。

「……お父さんみたいな人がいいです」

その言葉は、とても正直で、とても純粋でした。だからこそ、わたしは少し心配になってしまったんです。

お父さんのような人、というのは、多くの場合「安心できる人」「守ってくれる人」というイメージから来ているのかなと思います。それ自体は悪いことではないんですよね。でも「どんな家族を作りたいか」「結婚後、どんな毎日を過ごしたいか」というイメージが、まだそこには見えてこなかった。

結婚とは、家族という新しいチームを作ること。お父さんへの安心感や愛情とは、また別のものが必要になってくるんですよね。どんな家庭を築きたいのか。どんな夫婦でいたいのか。そこがぼんやりしたまま活動を続けると、「なんとなくいい人」に出会えても、「なんとなくこの人でいいのかな」という不安が消えないままになってしまうことがあるんです。

自分という地図を持たないまま旅に出ると、どうなるか

婚活がうまくいかない理由はいくつかありますが、わたしが見てきた中でいちばん多いのは「自分のことがよくわかっていない状態で動いている」というケースなんですよね。

相手に求める条件はすらすら言えるのに、自分が今どういう状態で、何を大切にしていて、結婚後にどんな生活を望んでいるかを聞くと、言葉が出てこない。これは珍しいことではなく、むしろとてもよくあることなんです。

毎日忙しく働いていれば、自分の内側を丁寧に見つめる機会なんてなかなかないですよね。「なんとなく30歳までには結婚したい」「まわりも結婚し始めたから」というタイミングで婚活を始める方も多いんです。焦りや不安から動き出すことは悪いことではないんですが、地図を持たずに旅に出ると、どこに向かっているのかわからなくなってしまうことがあるのかなと。

婚活の現場では「自分の市場価値を知っておく」という視点が大切だとよく言われます。これを聞くと少し怖くなる方もいらっしゃるかもしれません。でも、これは「あなたはどのランクですか」というジャッジをするためではないんです。「どこに課題があるか」を知るためのものなんですよね。

どのゾーンにいるかよりも、どこを磨けば自分がもっと輝けるか。それを知ることが、棚卸しの本当の目的なのかなと思います。

棚卸しで見るべき、3つの視点

知ること、それ自体が、もう、はじめの一歩

では具体的に、何を棚卸しすればいいのでしょうか。わたしがカウンセリングの中でよく一緒に整理するのは、次の3つの視点なんです。

1. 自分を客観的に見てみること

スペックと呼ばれる部分——年齢、仕事、収入、外見、生活習慣——をいったん紙に書き出してみましょう。これは自己否定のためではなく、現在地を知るためなんですよね。現実から目をそらしていては、出発点が定まらないもの。出発点が定まれば、どこに向かえばいいかも見えてくるんです。

自分のことを「特別でもないし、美人でもない」と思っている方ほど、書き出してみると意外な発見があるんですよ。料理が得意だった、コミュニケーション能力が高かった、清潔感があった。当たり前だと思っていたことが、相手にとっては大切なことだったりするんですよね。

2. 求める条件と、出せる条件の釣り合いを見てみること

「年収800万以上の男性と結婚したい」という希望は、もちろん持っていていいんです。でも同時に「自分は相手にとって、どんな価値を届けられるか」という視点も持っていると、マッチングの精度がぐっと上がってきます。

条件の釣り合いというと、なんだか冷たく聞こえるかもしれません。でもこれは「スペックで人を値踏みする」ことではなく、「お互いが幸せになれる関係性を選ぶ」ためのリアルな視点なんですよね。好きになってから釣り合わなさに気づいて傷つくよりも、最初から自分が輝ける場所を選んだほうが、ずっと心が楽なんじゃないかなと思います。

3. 結婚後の生活をイメージしてみること

これが、実はいちばん大切で、いちばん後回しにされがちなことなんです。

結婚は、ゴールではないんですよね。スタートなんです。式が終わった翌日から、毎日が始まります。仕事を続けるのか、子どもは欲しいのか、どこに住みたいのか、家事の分担はどうするのか。お金の使い方の価値観は合うか。休日の過ごし方は。義実家との関わり方は。

こうしたことを「出会ってから考えればいい」と思っている方も多いのですが、実は逆だったりするんです。結婚後の生活のイメージを持っている人のほうが、相手を選ぶときの目が整ってきます。ぼんやりしたままで動いていると、何十人と会っても「なんか違う」が続いてしまうことがあるんですよね。

「ありのままの自分」から始まる旅

棚卸しというと、自分の足りない部分を直すための作業のように聞こえるかもしれません。でも、わたしはそうは思っていないんです。

棚卸しとは、「ありのままの自分を、ちゃんと見てあげること」だと思っています。

今のあなたは、十分なんですよ。でも、自分のことをちゃんと知らないまま動いていると、その十分さが相手に伝わらないんですよね。地図を持たないまま旅をしていると、どんな素敵な場所に立っていても、自分がどこにいるかわからないままになってしまうもの。

婚活は、就活と似ているなと感じています。「自分という人間」を丁寧に言語化して、初めて「どんな人と、どんな人生を歩みたいか」が見えてくる。そしてそれが見えたとき、出会いの質がまるで変わってくるんです。

「ありのままの自分」から、「自分で作り出す自分」へ。これは自分を変えるということではなく、自分の輝きを自分で磨いてあげるということなのかなと思うんです。

棚卸しは、自分を否定するためのものではないんですよ。自分を大切にするための、最初の一歩なんです。

現実をちゃんと見ることは、逃げることではなく、自分の人生を自分でデザインするための勇気。その勇気を持てたとき、婚活はきっと、もっと軽くなっていくんじゃないかなと思います。

地図を手に持って、さあ出発しましょうね。目的地は、あなたが主役の物語の続きですから。

著者:佐々木志穂 / 婚活カウンセラー・婚活コーチ 婚活中の女性が「自分らしく選び、選ばれる」ための伴走をしています。個別カウンセリング・オンライン相談受付中。